告知
右NEW癌。これが私の病名。その瞬間から私は癌患者になった。
ひょっとしたら良性かも?という夢はもろくも崩れ去った。「残念ながらクラス5の悪性ですね。」あら、告知ってこんな簡単なの。病理カルテを覗き込むと、「粘液状の膜の中に悪性細胞が多数集結」なんて恐ろしいことが書かれている。
病理でいう「クラス」を「ステージ」と勘違いした私は頭を抱え込んだ。「ステージ5か。終わったぜ」。夢の中にいるみたい。Y君のひざの上に突っ伏し、頭を抱えた。覚悟はしていたので涙はでなかった。「がーん」といった感じ。
頭を抱えながら、「ん?まてよ。ステージ5なんて聞いたことないな。」先生に確認すると、細胞針の結果はステージ1~5で表記され、1は良性、あとは数字が高くなるにつれて悪性度が増し、5は完璧な癌。なんだびっくり。これで気が抜けた。前向きモード入力。
手術方法について先生が説明をはじめたのを遮るように転院を願い出た。
NEW癌の治療はこの先10年は通院が必要になることをネットで知った。病院は自宅から近い場所のほうが良い。
T先生のだらしなさ(白衣の着こなし方)も嫌だし、病院の立地も嫌。できれば、ネット上で、「乳腺外科医が薦める乳腺外科医」として名前があげられていた、O病院のH先生に診てもらいたい。
「H先生ってご存知ですか?」「知らないなぁ」先生はH博士を直接知らないとのこと。ネットで、そういう場合でも紹介状は書いてもらえることがわかっていたので、プリントアウトした紙をみせ、「こういう名前の方です」と指示、紹介状を書いてもらった。
エコーやマンモの画像、細胞針のプレパラート、全ての結果が入った紙袋を手に病院を後にした。途中、Y君と院内の喫茶店でコーヒーを飲む。「ま、予想通りだわ。仕方がないね」「うん。大丈夫だから」「ありがとう。いろいろ迷惑かけるね」「いいよ。頑張ろう」。
駅に向かうとちょうど朝顔市があったのか、手に植木鉢をもった人が歩いている。今までなら声をあげるところだが、そんな気が起きない。Y君と別れ、一人で山手線に乗り込んだ。「自殺するときの気持ちってこんなんかなぁ。んま、まだ死ぬと決まったわけじゃないし、みんな応援してくれてるし、それに応えなきゃ!」
ぼーっと車窓からの風景を眺めた。風景が違って見える。「ねえみんな、私、癌なんです。」電車の中で思いっきり叫びたくなった。
家に帰り、まず最初にO病院へ電話。すると、「H先生は3ヶ月先まで予約でいっぱいです」との返事。真っ青。私の尋常ではない雰囲気が電話越しに伝わったのか、「明後日いらっしゃれるなら、11時の枠に入ることができますよ。そこで先生とお話をしてみてはいかがですか?」あんだよ姉ちゃん、初めからそう言えっつーの!寿命が縮んだぜ!
とりあえず、道はつながった。明後日、どうなるか、楽しみだ。
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